2015/07/22 まんじゅうを見て、「誰かの頭みたい...」 なんて、思ってもいいのだろうか?
いいんです!
それもそのはず、そもそもまんじゅうは、 漢字で書けば「饅頭」。 「三国志」でもおなじみの天才軍師 諸葛亮孔明による発明で、 人間の頭を象ったものだったという。 (諸説あり。くわしい話は、またいつか...)
そして、 この白と茶色の饅頭は、 ただの美味しいまんじゅうではないのである。 実は、日本史を代表する悲劇の恋人たちを 表わしているのである。
1907(明治40)年創業の「松風堂」初代店主が "源義経"と"静御前"の二人に見立てて作ったという 「女夫(めおと)饅頭」。
義経の兄 源頼朝に追われ、 吉野の山中で生き別れた二人。
捕らえられた静御前は、1186(文治2)年 鎌倉鶴岡八幡宮に連れて来られて 舞うように命じられる。
頼朝の目の前で、殺されることを覚悟しながら、 義経を恋慕う歌を詠みながら舞った、静御前。
しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな
怒る頼朝、その頼朝を一喝する政子 (この二人の話もくわしくは、またいつか...)
この時、静は義経の子どもを身籠っていたけれど、 生まれてきたのが男子だったために その命を育てることも許されなかった。
鶴岡八幡宮境内にある小さな白旗神社の前には かつて二人の仲睦まじさを伝える霊石があり 『女夫(めおと)石』と呼ばれていたというけれど、 今はどこにもない、幻の石。
いつか二人を一緒にしてあげたいと 松風堂の店主が作った女夫饅頭は、 この幻の霊石に似ているという人も。
あの時、静が一人淋しく見たであろう鶴岡八幡宮の源氏池。
21世紀の今、饅頭のお二人に、並んで見ていただきましょう。
曇り空の夕暮れ時にひっそりと。
池の蓮も、まだ蕾のままで...
--------------------------------------------- 松風堂の女夫饅頭 (めおとまんじゅう)は、 白の「酒饅頭」が義経で、 発酵させた麹の香りが大人っぽく、皮がもっちり。 1日で硬くなってしまうため、若宮大路の角の店先では いつでもホカホカと蒸かしています。 茶の「利久饅頭」が静。黒糖の利休好み。 「久」は縁起の良い文字の当て字。
松風堂 鎌倉市小町1-5-24 0467-22-0666 ---------------------------------------------
*追記*
義経と静御前の悲恋が 言い伝えられてきた一方で、 あまり語られることのない 義経の正妻"郷御前(さとごぜん)"。
1184(元歴元)年に結婚した後、 翌年には追われる身となった義経に 実は同行していたとされ(吉野の山にもいたのだろうか) 奥州藤原氏の庇護のもと平泉で暮らし 1189(文治5)年、最期を共にしている。
この時、郷御前は、まだ22歳。 お墓には、4歳の娘と義経、三人が一緒に眠る。
静の恋も、郷の結婚も、儚い。
歴史まんじゅう、丸く見えても 中身はなかなか、複雑なり。
photo&文 中尾京子
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