甘〜sweets

2016/06/12

「13 アジサイのジレンマ」

紫陽花は、"逆転スイッチ"です。

現代のニッポンで、雨は
龍神さまが知ったら、さぞ悲しむであろうほどの嫌われよう。

「明日は雨に〜」と言う時、気象予報士の眉毛も、
通勤の人たちの眉毛も、旅行者の眉毛も、ハの字に下がり
「残念ながら...」 のトホホ・モードで語られます。

まして梅雨ともなると、連日の雨で洗濯物は乾かないし
薄暗いし、ウツウツと出かけるのも億劫で、お店は客足が減り、
ひたすら忍耐... ニンニン...

そんな現代人の(わがままな)ネガティブ梅雨思考回路を
ガラリと転換してくれる(もしかしたら最大の)スイッチが、アジサイ。

梅雨の訪れを待ってましたとばかりに咲くアジサイは、
まあるく光が灯るように明るくて、かわいくて、
そんなアジサイをニコニコと眺めているうちに、

雨音も悪くないな、、いやむしろ心地よくて、
だって恵みの雨じゃないか、降ってくれないと困るもの!
と発想の駒はヒックリ返り、同じ世界にいるというのに、
何とはなしに心が元気になっていく...


*注*アジサイの葉は、食べないでくださいね。
八十小路あじさい6.jpg

そして心が動けば、御菓子が生まれる!

豊島屋茶寮『八十小路(ハトこうじ)』の
上生菓子「あじさい」を見ていると、
きっとアジサイに心動かされたに違いない
作り手の"センス・オブ・ワンダー"が伝わってきます。

淡い色合いの"きんとん"が細やかな上生菓子で、
アジサイの花びら(正確には萼=がく)の微妙な彩りが
表現されています。中心の粒あんが、アクセント。


*注*アジサイの葉は、食べないでくださいね。
こまきあじさい8.jpg

北鎌倉『こまき』の「あじさい」は、
宝石のように透き通った寒天の錦玉羹が、
雨のしずくで花が輝いているよう。

錦玉羹は少し固めでコロコロとほぐれ、
中心のなめらかな白あんと
コントラストが愉しくて

どちらもいただいてしまうのが惜しまれるほど
細やかなつくり。少しずつ、一口ずつ、
眺めつつ味わう大人の御菓子です。

.
あじさい長谷寺風景1.jpg

湿度が高く、坂や崖の多い鎌倉の土地に
根を張って地崩れを防いでくれるアジサイは相性がよく
多くのお寺や神社の境内に、家々の庭に、川縁にも
さまざまなアジサイが植えられ育てられてきました。

起伏に富んだ地形のおかげで
上からも下からも、手前から奥の方まで、
さまざまな角度でアジサイを立体的に楽しめます。

白あじさい.jpg

アジサイの語源といわれる「あづさい(集真藍)」=「藍色が集まったもの」
のことば通り、藍の単色のアジサイが連続する景色もあれば、
さまざまな色彩や造形のアジサイに出会える景色もいいのです。

ブルーブルー.jpg

ヨーロッパで品種改良されて輸入されたアジサイも
もとは日本のガクアジサイが原産だとか。
どのアジサイの風景も、日本らしい風景なのです。

東慶寺ガクアジサイ.jpg


アジサイを見つめた目で
もう少し視界を広げていくと

たとえば、アジサイの奥に
花菖蒲があり、

花菖蒲.jpg

たとえば、足元には
苔が美しく育っていて、

苔に木漏れ日.jpg

たとえば、岩壁には
イワタバコが小さな花を咲かせていて

イワタバコ.png

たとえば、目を上げると
青々とした楓の葉が揺れていて

青もみじアップ.jpg

目や耳や、皮フや鼻や、あらゆる感覚を動員して
この世界にあるものを感じとることができたら...
梅雨は、生きものの息吹にあふれた美しい季節です。

青もみじ空.jpg


鎌倉のアジサイは、
今年もありがたい悩みのジレンマを抱えています。

あまりに集中する混雑は、
自然にも負荷がかかってしまいます。

大きなお寺や、有名な観光スポット情報に
目や足は向かいがちだけれど、
小さな路地や、名前も知らない坂道で
出会えるアジサイもたくさんあります。

ボンズくん&あじさい.jpg

御菓子の「あじさい」も、さまざまなお店で
それぞれ異なるイメージの作品が作られていて、
自分だけのお気に入りの「アジサイ&あじさい」を
見つけられたら、きっと愉しい。

そして、たくさんの生きものたちの美しい姿に
目を転じていけたら、もっと嬉しい。

そういう元気ポイントの発見をしていく方が
"逆転スイッチ"のアジサイらしい気がします。


鶴岡八幡宮では、放生会が執り行われ、
柳原神池にゲンジボタルが放たれました。(6月12日)
一週間ほど「ほたる祭り」として日没から午後8時半ごろまで
蛍の幻想的な光を見ることができます。

鎌倉は、
今年も美しい季節になりましたよ。

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*アジサイの葉について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082116.html
触れても害はないけれど、食べて体内に取り込むと有害であることがわかってきました。まだ研究途上なのでさまざまな説がありますが、食べないでください。ここにもアジサイのジレンマが。。
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豊島屋菓寮 『八十小路』
鎌倉市小町2-9-20
phone 0467-24-0810
11:00-17:00
水曜定休(祝日の場合は営業)
「八十小路」は豊島屋の茶寮で、看板の鳩サブレーにちなんだ
ハトつながり。季節の和菓子は持ち帰りもできます。

『こまき』
鎌倉市山ノ内501
phone 0467-22-3316
10:00-16:30
火曜定休 
*御菓子や営業時間は変わることがあり
 事前に電話確認がおすすめ

扉あじさい3.jpg


.
(写真&文 中尾京子)

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