祈

2013/10/24

「光明寺のお十夜(おじゅうや)」

夏、空が青いと、上下の感覚がなくなって転びそうになる瞬間があります。強い色彩が視界全体を覆うと、現実感や重力を見失ってしまうようです。秋真っただ中の10月13日に、その感覚に襲われるとは思いもしませんでした。夏が帰ってきたような暑さと晴天は、その数日後にやって来る巨大台風などまるで想像させませんでした。

出かけた先は、光明寺です。毎年秋に恒例の「お十夜」が始まったので、気まぐれに昼のお寺さんの感じを観に行こうと。(気まぐれに、と言ったのは、私にとって「お十夜」は夜に出かけるものだからです。その理由は後ほど。)

光明寺の「お十夜(おじゅうや)」。正式には「十夜法要会」といいます。それは何かというと、光明寺さんのHPから抜粋します...「十夜法要会・・・当山第九世観誉祐崇上人が、後土御門天皇の勅命により明応四年(1495)清涼殿において引声阿弥陀経・引声念仏による法要を勤修したことで、十夜法要をつとめることが許されました。十月十二日より十五日に至る間、盛大に行われています。沿道には植木店や露天など並び、堂の内外は、参拝の人の群れでうずまります。」ということです。「お十夜」の期間には、さまざまな法要が行われます。

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そもそも「十夜法要」とは、10月から11月にかけて全国の浄土宗寺院でひろく行われる「念仏会(ねんぶつえ)」です。浄土宗でのお十夜は、明応4年(1495)、何を隠そうここ浄土宗大本山・鎌倉光明寺が始まりであるとのことです。

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とても清らかしい日であるのですが、庶民としては真逆と言っていい、異なる楽しみがあります。それが、前述した、夜の「お十夜」です。


これが、夜の「お十夜」です。

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縁日です。やきそば、たこやき、おでん、大判焼き、たいやき、ベビーカステラ、バナナチョコ、フルーツ水飴、フランクフルト、お好み焼き、いかやき、もっちりボール、やきとり、タピオカジュース、ホルモン焼き、ビール、ビール、そしてビール、です。

屋台はバス通りの入口付近から境内を貫き、本堂手前まで隙間なく立ち並びます。夜のお寺の境内でビール片手に近所の友達と下世話な話で盛り上げる行為というのは、法要に明け暮れるお坊様方の清らかしい行いとはあまりにかけ離れているせいか、うしろめたさのかけらもありません。つくづく自分が残念な人間であることに開き直る年中行事です。その姿はお見せできる代物ではないので、話は昼間に戻ります。


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さて、昼間はまだ来る夜の宴のための準備中という感じで、屋台で売るおにいさんおねえさん方も、のんびりと世間話なんかして笑いながらそれぞれが自分の出店の支度を行っています。


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上の写真の正面に見えるのが、かの鎌倉の寺院の門としては最大の格式を備えたという光明寺の山門です。間口約16メートル、奥行き約7メートル、高さ約20メートル。高台から鎌倉の海を眺めた時に、その海岸線の右端に見える「何やら大きくて立派なもの」が、この山門です。
ふだんこの山門の内部に入ることはできません。しかし、「十夜法要」の時だけ、拝観料300円を払って入ることができます。


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昇り下りする階段は「頭上注意」の紙が邪魔で仕方がないほど低いです。背が高い人間はそれを知っていながらそれでも必ず頭をぶつけます。あれは決して笑いをとろうとしているわけではありません。どうしていつもそうなるのか、知っている人がいたら教えてほしいものだ。などと考えていたら案の定頭をぶつけます。
山門内の二階に上がると、釈迦三尊・四天王・十六羅漢が祀られています。写真は撮りましたが、お見せしないことにしました。来年のお十夜でお会いしましょう。

そんな二階からは、素晴らしい景色が楽しめます。

本堂側。

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そしてこっちが本堂側と逆になる、海側です。

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手前が材木座海岸、その右奥が由比ヶ浜海岸。海岸に沿ってずーっと左まで行った突端の稲村ヶ崎まで一望です。


海が青い...こんなところでまた上下感覚を失い地面に落ちたら大変なので、そそくさと山門を下りて、バス通りに行ってみます。
バス通りに出ると、寂しいことに、かつて隆盛を極めたというお十夜名物の植木屋さんの連なりというのは、今はもうすっかりなくり、出店はたったの一軒だけでした。お店のおばちゃんに聞いてみると、親切に教えてくれました。「今はこの辺のお家もみんな駐車場を持つでしょ。車が出入りする場所には出店許可が下りないのよ。」なるほど、と思いました。「それからね、昔ほど儲からない。」そうですか、と言いました。

昼間の「お十夜」は、こんな感じでとてものどかです。来るべき夜の宴に力を貯め込んでいる、そんな感じでしょうか。それはそれでなんだかいい感じです。

「私の家は、光明寺の裏の辺りです。」というと、たいていの地元の人ならなんとなくどの辺りかがわかります。近所だし、また以前に家族だった猫もここで眠っていることもあり、とても親近感を感じます。何より「光明寺」という名前が、お寺としてとても「ナイスガイ」な感じがして好きです。名前に偽りはなく、門前が「パーン!」と海、というこのお寺は、いつも光に満ち満ちていて、深山幽谷にあるお寺とは対象的に、「パーン!」と開放的なのです。ビーサンつっかけて材木座海岸に行って、バニーで弁当を買って、その足でふらっと寺住まいの人慣れした猫でも撫でに行ってあげてください。ビーサンが似合うナイスガイな寺、光明寺へ。


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ボンズくん「材木座海岸です。指宿じゃないですよ。」

(Kou)


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