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2014/11/20

「鎌倉の匠シリーズvol.4 - 鎌倉仏師 大森昭夫氏を訪ねて」

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鎌倉の匠シリーズ - 鎌倉仏師・大森昭夫氏を訪ねて
<第4回> 教室風景に寄せて


鎌倉の匠シリーズ - 鎌倉仏師・大森昭夫氏を訪ねて。最終話、第4回です。昨秋、ご案内を頂いていた長谷寺での教室生徒さんたちとの作品展へお邪魔させて頂きました。






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大森氏がご自宅の工房で仏像彫刻の教室を始められたのは、8年ほど前からです。当初少人数で始められた教室も、いまは新しい人を迎えるのが難しくなるほど、熱心に通う生徒さんが大勢集っています。

伺う前に聞いた教室の様子から、少しは予想していたものの、会場に並べられた作品たちのその圧倒的な完成度に改めて驚いてしまいました。せっかくなので、いくつかご紹介を。


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<写真左 薬師如来 仏面。教室に入ると最初に手掛ける彫刻作品。にしてこの完成度。>
<写真右 御年80余才の婦人の作。幼き頃に生き別れた母を想って>


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<写真中 たくさんの作品たちはどれも威風堂々といった風情。>
<写真右 持国天。見据える眼力>


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<写真左 阿修羅王、写真右 仁王像。立ち上る光背の焰、流れる衣裾。どれも迫力があります>


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<写真左 制多迦童子。子どもらしい愛らしさが。>
<写真右 迷企羅大将 。こちらはお若い方らしいのびやかな作品。>



ふと、工房で伺った話しを思い出しました。 "弟子を取ったら経営者にならなくちゃいけなくなるだろうなって。そう思ってね" と話していた大森氏は、ひとりで仕事に打ち込むことを選んだ訳ですが、期せずして、教室を持ち、その熱心な生徒さんたちを教える時にはやはり、仏さまと向き合う氏の姿勢が伝わっているように思います。


ー 僕なんかもね、いま教室の生徒さんに教えるときは、ここはこーだあーだって教えるんだけど、根本にはそう言う事(祈りのために真剣に向き合う心)があるっていう。あんまりそんな事いうと説法みたいになっちゃうから、なんとなく2-3年くらいした時に、ああ、この先生はこんな事考えてるんだなっていうのが分かってくれれば、それでいいんだと思う。そう思いますね。


それぞれの生徒さんの作品には、それぞれの祈りが時間をかけて丁寧に込められているように感じられ、その力に唯々驚嘆するばかりでした。しかし、中央で生徒さんの作品の方を向いて配された大森氏の彫像を見つけたとき、それは周りの彫像とは全く異なる、まさしく別の空気をまとって、静かにそこに在りました。信心とは離れた日常を送る私が書くのは荒唐と笑われそうですが、しかしそこには個人の想いなど排した - "仏さま" が刻み込まれている - と感じた瞬間でした。

初めて取材に伺ってお話を聞いてから、長い時間を掛けてここへ来て、この瞬間を感じてようやく、大森氏の話されていた言葉の "人のために彫るもの" "自分の作品ではない" という言葉の意味するところを、やっと心から理解出来たような気がしました。

工房に、仏像ではない、大変かわいらしい小鳥の彫刻がありました。雑談の中で "こうしたものを彫るのはどうですか?" と伺ったところ、"楽しいねえ" とにこやかな表情ですぐに答えられました。純粋に彫る愉しみだけで作るものに対する和らいだ表情が、逆に仏像に向き合うときの厳しさを物語るようであり、印象的でした。


生み出す作品は芸術作品のようであって自身は芸術家ではない。日々向き合う世界は仏教世界に在りながら自身は僧職ではない。その狭間に身を置く厳しさは、話しを聞き、外から慮るに如何ほどか... と思ってしまいますが、内にいる氏は、それを過ぎ越した然り気なさの中にいらしたのだ、と。はじめて工房を訪れた時、工房そのものや氏自身の佇まいに感じた然り気なさの所以は、此処にあったのだ。


長い取材を通じ、厳しい技の世界に生きる方の矜持をみせて頂いた、大変に貴重な時間でした。


多謝。

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(rica)



大森氏の仏像彫刻教室作品交流展は今年も開催されます。紅葉の長谷路の途中、ぜひその空気に触れに、立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

開催日:11月29日(土)ー30日(日)10:00-16:00
場 所:長谷寺普門寮(拝観受付のすぐそばの建物です)

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