恵

2013/10/31

「清右衛門のみちくさノート 10月号」

『今月のテーマ:カマクラ・ブルー』
 

二十四節気でいうと霜降(そうこう)。といっても、このごろはもう一ヶ月もしないと霜は降りませんね。霜は霜で美しいものですが、もう少しだけ寒くなる心の準備がほしいところです。

秋はいつとはなく秋になって、気がつくとああ秋だという感じがして、そうこうしているうちにふと気がつくと冬になっているという感じがします。10月はその「ああ秋だ」という感じのする月です。夏が好きで、秋は落ち込むというひともいますが、そういうときは道端の草木を目に留めてみてください。けっこう、秋もいいものだという気がしてきます。


鎌倉の秋は、だいたい叢(くさむら)からやってきます。難しい漢字ですが、よい字なのでお見知り置きください。かつて、鎌倉の山がおおかた松林だったころ、おそらくススキの原がそこかしこに広がり、傍らには種々の草が絡み合う叢がたくさんあったと考えられます。そういう名残が今も各地に残っています。

例えば、市の花となっているリンドウ。自生はほとんど見かけませんが、寺社に数多く植えられています。また、鎌倉のリンドウを守ろうと増殖していらっしゃる方もおられます。自生している場所があったら、ぜひお知らせください! 個人的には覚園寺のものが印象に残っています。

茎がしなやかでなよなよとして他の草にしなだれかかるように生えますが、鮮やかで雅やかな青は並ぶものがありません。螺旋状に閉じている蕾も美しく、晴れ間にだけ咲く性質があります。

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リンドウ Gentiana scabra var. buergeri リンドウ科 多年草


リンドウよりも、宝石のように透明感のある青が印象的なのはヤマトリカブトです。こちらも叢でほかの草に寄りかかるように咲きます。森の途切れるやや明るい場所を好み、鎌倉では山道に沿って点々と見かけます。

よく知られているように猛毒ですが、触ったくらいではまったく問題ありません。名前の通り、兜のような形は面白く、時折白みが強い花も見かけます。甲斐甲斐しくハナバチの類が蜜を集めているようすもかわいらしいものです。

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ヤマトリカブト Aconitum japonicum キンポウゲ科 多年草


リンドウが雅な青、トリカブトが宝石のような青としたら、すこし派手めな舞台衣装のような色合いの青はナンテンハギの花です。萩というと、10月はもう豆果ができていて終わりの花ですが、このナンテンハギだけは一足遅れて咲きます。きつめの青も、大御所の風格といったところ。それからほんとうは萩ではなく空豆の仲間です。

よく草刈りされた明るい芝地のような場所に自生し、少しだけ日陰を好む前述の2種に比べ、翳りはじめた秋の陽を全身で浴びてやろうという力強い緑に、いつもはっとさせられます。

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ナンテンハギ Vicia unijuga マメ科 多年草


ほんの7,8年前ですが、鎌倉で働きはじめたころ、バスに乗って散在ガ池森林公園に行きました。降りた瞬間、「お前、よく来たな」とばかりにドスの利いた青で出迎えてくれたのがナンテンハギでした。なので、この花を見るといつもその時のことを思い出します。リンドウもヤマトリカブトも鎌倉らしい花ではあるのですが、僕にとって、きっとナンテンハギの青が「鎌倉」であり続けるのだろうと思います。

次回は、たぶん冷気と木々が織りなす美しさについて


(清右衛門)2013年10月

四季の草花や木について、通称「みちくさ部長」清右衛門が移住者の視点からご案内。鎌倉らしさを探究していきます。

▽北鎌倉たからの庭 みちくさ部
http://takaranoniwa.com/program/workshop/michikusa.html

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