2016年5月の記事一覧

2016/05/30

「皐月の精進料理」

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なんとも気持ちの良い季節到来ですね!目に青葉、山ほととぎす...は、江戸時代の句ですが、たからの庭のことを詠んだのでは?と思いたくなるような、まさにぴったりの句。緑一色、薫風そよぎ、すっかり上手くなった鶯の歌を聞きつつフィトンチッドいっぱいの庭にいますと、すっーと世間の毒気というか、力んでいた自分が素に戻れますね。
これから梅雨を迎え鬱陶しくなる前のほんのひととき、端午の節句で大分ではよく作られる郷土料理の黄飯、その黄飯にかけるかやく、やさしい味わいの豌豆とズッキーニのすり流し、新玉葱や新人参の柔らかく甘い魅力を生かした献立をいたしました。どれも簡単に作れますよ!

1.黄飯  2.精進かやく  3.豌豆とズッキーニのすりながし 4.新玉葱のソテー ポン酢餡かけ 5.新にんじんのしりしり

1.黄飯
黄飯は、大分県臼杵市の郷土料理。「おうはん」と読みます。愛知や静岡にも同様の料理がありますが、それぞれ「きいはん」「きめし」と言ったりしています。もともとはスペイン料理のパエリアから来た説が有力です。大分では当主大友宗麟がキリシタンだったので、南蛮文化の影響を食文化でも多く受けていたんですね。
黄色い着色にはスペインではサフランを使いますが、日本では手軽に手に入る梔子の実を使います。黒豆も乗せますが、もしかすると黒オリーブの代わりなのでは?と思ったりもします。地域によっておひな祭りだったり、大晦日だったりしますが、一番多く食べられるのは端午の節句です。ちまきだけでなく、南蛮渡来のご飯でお祝いするのも楽しいですよ。

材料:米2・1/2C、梔子(くちなし)の実2個、水3C、塩小3/4
黒豆の煮豆適宜

1)米は洗ってざるにあげておきます。
2)分量の水に梔子の実を割っていれて、色を出しておきます。
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3)鍋に米と色がでた水だけを入れて塩で調味して、15分程度浸水して炊飯します。梔子の実のかすが入らないように、色がついた水は漉して使ってくださいね。また、浸水して長く置くと、きれいな黄色に炊きあがりませんので、注意してください。
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4)炊き上がりを茶碗に盛り付けたら煮豆を数個飾ります。
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2.精進かやく
黄飯にかかせないのが、かやく。簡単にいえば汁が少なめの建長汁といったところでしょうか。地元大分では魚のすり身と大根や人参を入れて煮て、黄飯にかけて食べますが、最近は別々に食べるようです。精進なので、すり身の代わりに豆腐をたっぷり使い、野菜のうまみたっぷりの滋味あふれる煮物に仕立てました。

材料:大根300g、にんじん30g、ゴボウ1/3本、木綿豆腐1/2丁、昆布出汁3C、サラダ油適宜、みりん大1/2、淡口大1、酒大2、塩少々、万能ネギ適宜

1)大根、にんじんは3cm程度の長さの拍子切りにします。
2)ゴボウはささがきにして水に放っておきます。
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3)豆腐は水切りしておきます。
4)鍋に油を入れて、水切りした豆腐を崩しながら入れて軽く煎ったら、ほかの野菜を全部加えます。先に豆腐を炒めると汁が濁りにくいんですよ。さらに炒めて出汁を入れて調味し、柔らかくなるまで煮ます。
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5)盛り付けて、彩りに万能ネギの小口切りをふります。
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3.豌豆とズッキーニのすりながし
豌豆(えんどうまめ)の美味しい季節です。豌豆だけですとざらっとした舌触りになりやすいのですが、ズッキーニが入ると、つるっとしたテクスチャーになって、飲みやすくなります。今までは生クリームを入れたりするレシピで作りましたが、今回は豆乳でさっぱり仕上げました。温めても冷たくしても美味しくいただけますよ。

材料:豌豆さやつき300g、ズッキーニ1本、タマネギ1/4個、オリーブオイル適宜、バター大1、
昆布出汁3C、塩小1/2弱、豆乳1C、コショウ少々

1)豌豆は作る直前さやから取り出します。必ずさやつきを買ってください。豆の柔らかさが違います。
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2)ズッキーニはスライスしておきます。薄い方が早く火が通ります。
3)タマネギはみじん切りにしておきます。
4)1を塩ゆでします。豆の鮮度にもよりますが、沸騰したところに入れて3分程度でよいでしょう。ゆであがったら水にとってください。
5)鍋にオリーブオイルとバターを入れてあたたまってきたらタマネギを炒め、透明感が出たところで豌豆とズッキーニ、出汁を加え5分加熱します。バターはこくを出すために使用しますが、苦手な方はオリーブオイルだけでも結構です。
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6)ミキサーで5を攪拌してから鍋にもどして、豆乳を入れ、温まったら調味します。冷やして召し上がる場合は少し塩を強めに調味して、冷蔵庫で冷やす前にしっかり粗熱をとってから冷やすと早く冷えるし、痛みも少ないですよ。
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4.新玉葱のソテー ポン酢餡かけ
新玉葱は辛みも少なく、水分もたっぷりで美味しいですよね。まんまソテーにしてきりっとした即席ポン酢でいただきます。簡単ですが、ポン酢にとろみをつけてソース仕立てにすることによって、それなりに立派なひと品になります。

材料:新玉葱各1/2個、絹さや各2本、片栗粉大1弱(水大2)、塩・コショウ適宜、日本酒大1
サラダ油適宜、ポン酢(レモン汁・醤油・みりん各大1)、水とき辛子適宜

1)新玉葱は皮をむいて輪切りにし、軽く塩・コショウを振ります。
2)絹さやは筋を取って、湯がき、水にとっておきます。
3)ポン酢の材料を混ぜ合わせておきます。
4)フライパンに油を敷き、1を途中酒を振りつつ表裏焼きます。酒を振ると風味が増すだけでなく、早く焼き上がります。そこにぽん酢を少々かけて焼き付けます。
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5)焼けた玉葱を器に盛り付け、フライパンに残りのぽん酢を入れ、味を見て辛いようなら出汁を少し足し、水とき片栗粉でとろみをつけて玉葱にかけます。絹さやを添えて、水とき辛子をかけて召し上がってください。
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5.新にんじんのしりしり 
しりしりは沖縄の郷土料理。人参を千切りにして炒めて作る料理で、沖縄では千切りのことをしりしりというのでその名がつきましたが、炒めるときしりしりという音がするのでついたという方もおいでです。主に卵でとじたり、ツナを入れたりしますが、精進料理ですので、たっぷりと煎りごまに人参のうま味を吸わせました。お弁当や、なにか一品足りない時の副菜にぜひどうぞ。人参にカロチンが多く含まれているのはよく知られていますが、油と調理するとビタミンAとしての吸収率が高くなるんです。葉付きが買えたら、ぜひトッピングに使ってくださいね。

材料:普通のオレンジのにんじん2本、黄色人参1本、サラダ油適宜、白煎りごま大2~3、砂糖小1/2、醤油大1~1・1/2

1)にんじんはマッチ棒程度の千切りにします。
2)フライパンにサラダ油を敷き、にんじんを炒め、柔らかくなったら砂糖から調味します。
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3)2に半づきした煎りごまを加え、一混ぜでできあがりです。必ず味見をして薄いようなら醤油を足してください。また砂糖は人参の甘さを引き出す程度の少量でOKです。
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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 5月の献立より)

2016/05/26

「12 鎌倉の、梅仕事を探して。」

今年も鎌倉に帰ってきたツバメたちが
軒先に巣をつくり、風を切るように飛んでいます。

夜には、もう滑川のいくつもの上流で
蛍が見られるようになりました。

思わず息をのむほど幻想的で、小さな光。

季節がしずかに変わっていて
ああ時は流れているのだと、
そんなあたり前のことに気づかされます。

梅の実も大きくなりました。

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          北鎌倉 光照寺の梅の木

梅は、昔から鎌倉の寺院や家庭、
農家で育てられてきました。

鎌倉を舞台にした漫画&映画「海街diary」の中でも
梅は印象的なモチーフの一つです。

人間だけでなく、生きものは手がかかる。
それは厄介で、なかなか思うようにいかないけれど
だからこそ愛おしいのだと教えてくれる、庭の梅の木。

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まるでその枝から摘んできたばかりのような
青い梅の実を象った和菓子に会いました。
北鎌倉「こまき」の「青梅」。

なめらかなこし餡を中に包んだ上生菓子です。
これ以上ないほどシンプルで美しい姿は、
瑞々しい青梅の実そのもの。

窓外のやわらかな風景を眺めながら
御抹茶と一緒に店内でいただくと
少しの間だけ時の流れを止められる気がします。

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     窓の外には円覚寺の白鷺池 菖蒲の花が咲いています。

「青梅」が作られる期間は短くて、
「こまき」の御菓子は、一期一会。季節ごと、行事ごと、
その日のお茶会の予定などによっても細やかに変わります。

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鎌倉で30年ぶりに復活した
梅の御菓子もあります。

鶴岡八幡宮の東側にある創業111年の老舗
「旭屋本店」の「雪香梅」。

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外見からは想像がつかないけれど、
青梅の甘露煮を、白餡が包んでいます。
皮にはハチミツが入っていて、甘味も爽やか。

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「雪香梅」という名前に、
まっ白な雪の中でも花を咲かせていた
凛とした梅の姿を思い出します。

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とても手間がかかるため
しばらく途絶えていたこの御菓子は
五代目店主によって、今再び季節限定で
作られるようになりました。


梅を慈しみ、美味しくいただくために
手をかけ、心をかけた"梅仕事"いろいろ
御菓子の世界で見つけるたのしみは、つづきます。


梅の雨、"梅雨"の季節ももうすぐ。
長くつづく雨もまた、生きものたちのための
天の仕事...かもしれませんね。


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『こまき』
鎌倉市山ノ内501
phone 0467-22-3316
10:00-16:30
火曜定休

『旭屋』
鎌倉市雪ノ下3-3-21
phone 0467-22-2622 fax 0467-22-2768
9:30-18:00
月曜定休(祝日の場合翌日) 
五代目は、明治38年創業の「旭屋」の味や技を大事にしながら
さまざまな新しい和菓子にも挑戦しています。
https://www.facebook.com/asahiya.honten/?fref=ts


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photo&文 中尾京子

2016/05/02

「11 萌えよ新緑、噛めよ麩まんじゅう」

「山笑う春」という季語のとおり
春、鎌倉の山は、まるで顔をほころばせるように
やわらかな表情になる。

茶色がかっていた山は、暖かくなるにつれて
新芽の薄い緑色や、明るい花の色...桜色・桃色・白色に
ふうわり包み込まれていく。

やがて遅咲きの八重桜も終わるころ、花は葉に変わり、
山は濃淡のグリーンに覆われる。若葉の季節である。
ムンと一回り山が大きくなり、こちらに近づいて見えるのは、
葉が増え茂ってきたためだろうか。


若葉の季節の和菓子といえば、
まず柏餅をあげたい。

端午の節句の供物、縁起物として、江戸時代中期頃
全国に広まったといわれる柏餅は*
自然の状態に近い「木の葉」感では和菓子随一。

カシワの葉に覆われたおかげで
香りよく、持ちやすく、隣同士でもくっつかず
つつつと半ば重なるように店頭に並ぶ。

白い餅のこしあん、草餅のつぶあん、薄紅色の餅の味噌餡...
スタンダードな柏餅もたのしいけれど、

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鎌倉には、もう一つの柏餅ともいえる
小さな「カシワの葉の麩まんじゅう」がある。

この季節の間だけ作られる「麩帆」の限定品。

パッケージ入り.jpg

「麩帆」は、生麩の小さな店で
通年で「麩まんじゅう」も作っている。

よもぎの入った生麩で こし餡を包んだ「麩まんじゅう」は
笹の葉にくるまれていて、冷たくしていただく。
瑞々しい笹の香りが、爽やか。

笹麩まんじゅうアップ.png

「カシワの葉の麩まんじゅう」は、
生麩でこし餡を挟み、カシワの葉を被せたもの。
笹の葉の麩まんじゅうより、一層「生麩」の風味をたのしめる。

ヒンヤリ冷たくて、とてもやわらかい。
そして"歯ごたえ"がある。

トロけるやわらかさとは違う。
餅のモチモチさとも、また違う。

やわらかいのに、噛まずにはいられない。
つるんと飲み込めそうだけれど、噛んでしまう。
なんとも不思議な食感。
奥歯でグッと押し切るようにして噛む。噛む。

噛むほどに、なめらかな こし餡の甘さが
ふわりと広がる。
この感覚が、好きな人にはたまらない。

麩まんじゅう2種.png
左が「カシワの葉の麩まんじゅう」右が笹の葉から取り出した「麩まんじゅう」

「生麩」は、精進料理のために生まれたもので
お刺身や、田楽、煮物、揚げ物、お吸い物の具など
さまざまな調理法、さまざまな味つけで食べられる。

その"何でも来い!"的なスタンスと、変幻自在な性格ゆえに
「生麩は謎の食べものだ」と考える人もいる。
甘い「麩まんじゅう」を、食べたことのない人も存外多い。

しかし、一度クセになると
この味わいは忘れられない。


葛から作られる「水まんじゅう」は、
つるんとしたノド越しが夏に合う。

今はまだ新緑の季節だから、
ノド越しを急がずに、一噛み一噛み、
軽やかな甘さを噛みしめたい。

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「麩帆」にほど近い、甘縄神明宮の境内に行くと
新緑の木漏れ日があふれていた。

階段を上ってお参りし、振り返ると海が見える。
穏やかな青い春の海ではなく、
もう初夏のまぶしい海になっている。

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麩帆

鎌倉市長谷1−7−7
0467-24-2922
10:00~ 売り切れたら閉店
月曜休み

生麩、よもぎ麩、粟麩のほか、
笹の葉に包んだ麩まんじゅうが定番。

お店の前で.jpg

*柏餅あれこれ
 柏餅の「柏」はあて字。
 柏=ヒノキ科のコノテガシワを意味する文字だが、これは針葉樹。
 柏餅に使われるカシワは、ブナ科の槲(カシワ)である。
カシワの木は、古い葉が、新芽が育つまで落ちないため
家系が途切れることのない縁起のよいものとして、
端午の節句の供物に用いられてきた。
18世紀中頃(江戸時代中期9代将軍徳川家重〜10代将軍家治の頃)に
江戸で生まれた文化が、参勤交代によって全国へ広まったと考えられている。


photo&文 中尾京子

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