2016年2月の記事一覧

2016/02/28

「如月の精進料理」

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2月は如月。別名「衣更着」ともいわれるように、衣をさらに着重ねるほど寒さ厳しい月ですよね。
一方で紅白色とりどりの梅や水仙の香り、蕗の薹などの芽吹いた山菜に春の訪れを感じたりの日々でもありますね。
節分祭や針供養、初午祭、涅槃会、祈年祭など鎌倉でも寒い中ではありますが行事も多く、料理では初午で稲荷寿司を食べたり、節分にちなんで大豆を使った料理などが並びます。そうそう、ここ数年、関東でも節分に恵方巻きを召しあがる方も増えましたね。ルーツは諸説ありますが、コンビニが広めたことは間違いないようです。バレンタインデーにチョコを送るのも日本のチョコレートメーカーが編み出したので、日本人の乗りやすい性格で次はどんなブームに火が付くのでしょうか。とまれ、太巻きは春の行楽シーズンに欠かせませんので、今月は精進の太巻きを中心に献立を組みました。
きれいに具がセンターにいく巻き方や、すし飯の塩梅などコツをお伝えしました。汁は昆布や大豆で作る複合の精進出汁を使ったお澄まし、主菜は甘くてジューシーな旬の蕪の煮物、副菜は出始めの蕗の薹を使い、蕎麦の実のかりっとした食感を盛り込んだ蕗の薹味噌と、のし梅と酒粕をサンドした八寸にも使える栄養満点の箸休めなどをご紹介していますよ。ぜひご参考になさってください。

1.精進太巻  2.手毬麩の澄まし  3.蕪の炒め煮 4.蕗蕎麦味噌  5.焼き酒粕とのし梅の博多

1.精進太巻
でんぶや卵焼きがなくても、こんなに美味しいのか!っていう精進の太巻きです。恵方巻きとしても召し上がっていただけるよう長いままでディスプレイしました。
紅生姜などの細かい具は下のほうにおき、胡瓜など長くて大きいものを上に置くとうまく巻けます。長いまま食べる場合は、ふわっと巻いてくださいね。

材料:4本分
米3C、出汁690cc
打ち酢:酢60cc、砂糖大1・1/3、塩小1・1/3
高野豆腐:4枚、、出汁360CC、薄口大1、砂糖大3
干瓢(かんぴょう)2本・干椎茸4枚:出汁1/2C、砂糖大3、醤油大2、味醂大1
胡瓜:1本、塩少々
紅生姜適宜

1)米は洗ってざるにあげて15分以上はおいてください。水加減は普段より少なめの15%増しがすし飯の一般的な水分量です。また洗米も普段よりは少し丁寧にしっかりと研いでください。浸水したらさらに20分程度おいて炊きます。
2)打ち酢の材料をあわせておきます。この打ち酢は酢が飛んでしまうので、火にかけたりしないでください。具を甘辛にするので、砂糖も入りません。
3)干瓢(かんぴょう)はさっと洗って、塩でもんで洗い流し、熱湯で8分程度ゆでておきます。
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4)干ししいたけは前日から水で戻しておいてから軸を切り落とし、煮汁をつくって水気を切った干瓢とともに汁気がなくなるまでゆっくり煮ます。干瓢は海苔の長さ、椎茸は薄くスライスしておきます。
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5)高野豆腐は最近はお湯などで戻すタイプは減り、いきなり煮汁に入れるタイプがほとんどですね。今回も戻さなくていいタイプを使っています。そのまま煮汁に入れて汁気がなくなるまで煮て、長いほうを4等分にしておきます。
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6)胡瓜は塩ずりして洗ってから、縦に1/4に切って種を取り除いておきます。種の部分は水分が多く、ご飯がびしょびしょにならないようにするため取り除きます。
7)ご飯が炊きあがったら10分蒸らして飯台にあけ、打ち酢をかけて切るようにしゃもじで混ぜてから、うちわで扇ぎます。混ぜながら仰ぐと粘りが出てきますので、必ずよく混ぜてからあおいでください。
8)まきすに海苔をおき、端2cm程度をのこしてご飯250gを敷きますが、少し手前を高くもり、終わりのほうを薄くするのがこつ。具をセンターにおいてぐいっと内側に入れ込むように巻いていきます。食べるまで静かにおいておくと切りやすくなります。
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2.手毬麩の澄まし
精進の出汁というと昆布出汁がすぐに思い浮かぶかと思いますが、大豆や干し椎茸、かんぴょうといった乾物も複合的に使って、吸い物の出汁にしたりします。特に大豆の甘さを感じる滋味あふれる吸い地は具材の味も引き出します。前日から漬けてしっかりと旨味を出してから使ってください。

材料:大根200g、京人参50g、生椎茸2枚、芹少々、蒟蒻1/3枚、油あげ1枚、
酒粕150〜200g、酒大1、信州味噌大2〜3
昆布出汁5C

1)干し椎茸、昆布はそのまま 大豆は軽く炒って、分量の水に一晩つけておく。今回は各10gずつです。
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2)手毬麩は水で戻しておきます。
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3)三つ葉は結んでおきます。
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4)若布は水で洗って塩を落として、さっとしもふってから水にとり、笊にあげて食べやすい大きさに切っておきます。
5)椀に麩と若布をおいて、1の出汁を温め、アクをひいたらこし、調味して、椀にそそぎ、三つ葉を吸い口に浮かべます。出汁を取った残りはつくだ煮などにしてください。

3.蕪の炒め煮
冬の蕪ほどおいしいものはありませんね。春の七草"すずな"としてもおなじみですが、白い身のほうにはジアスターゼなど大根と同様の酵素をもち、消化吸収を助けますし、緑の葉と茎の部分にはビタミン、ミネラルがたっぷり。なにより生で食べても火を入れても美味しく、懐にも優しいですし、この時期たくさん食べたい食材の一つです。炒め煮という技法で、コクを出しました。今回は皮はむき、皮は即席漬けなどにしましたが、面倒でしたら皮付きのままで作っていただいても結構です。

材料:蕪1わ、油揚げ2枚、出汁2C、ごま油適宜、砂糖・醤油各大2・1/2、酒大1

1)かぶは軸を2cmほど残して切り、皮をむいて6等分にします。小さめの蕪なら4等分にしてください。すこし青い部分を残すと見た目もきれいです。
2)葉は約4cmの長さに切っておきます。
3)油揚げは盆笊に乗せ熱湯をかけて油抜きをし、縦半分に切ってから1cm幅に切っておきます。
4)鍋にごま油をいれ、強火でかぶを焦がさないように炒め、表面が透明になってきたら葉を加えてさらに炒めます。
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5)葉がしんなりしたら中火にして出汁と油揚げを加え、煮立ったら砂糖をいれ、数分おいて酒、さらに醤油を加え、かぶがやわらかくなったら火を止めます。必ず調味料はお砂糖から入れてくださいね。先にほかの調味料を入れてしまうと、砂糖の分子が大きいので、味が入りにくくなるためです。また、蕪は柔らかくなるのが早いですから、注意しながら崩れないよう煮てくださいね。
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4.蕗蕎麦味噌
天然の蕗の薹が出回ってくると春がきたーっとうれしくなります。姿形も美しく、ほろ苦い風味はフキノールという成分で免疫機能を強化し、花粉症にも効果があるようです。取れたてですとそのままで大丈夫ですが、売られているのは大体数日たっているものが多いので、軽くあく抜きをします。また揚げた蕎麦の実を加えてボリュームをまして、食べすぎないような工夫をしました。どうぞ初春を感じてください。

材料:フキノトウ2〜3個、重曹みみかき1杯、蕎麦の実50g、白味噌100g、砂糖小2、酒大1

1)蕗の薹は、たて1/2に手で割いたら水にさらしてから、熱湯に重曹を加え、浮き上がってこないように箸でおさえつつ1分ほどゆでて水にとります。水をできれば1回は替えてしっかり重曹を抜いてから、粗みじんに切っておきます。
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2)蕎麦の実を少ない油でいためるように揚げて、紙で余分な油分をとっておきます。
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3)白味噌に砂糖と酒を入れて丘まぜ(火にかける前に事前に混ぜること)してから火にかけ、1,2を混ぜあわせて火を止めます。
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5.焼き酒粕とのし梅の博多
材料を重ねる料理を"博多"といいます。博多帯から由来しています。旬の新酒の香り高い酒粕とのし梅をサンドして風流なおつまみにしました。これは古くからあるこの時期定番の料理です。茶事の八寸などでもよく出てきます。今回は酒粕を焼いてより香ばしくして、包丁で四角くカットしましたが、梅の抜き型を使ってもいいですね。

材料:酒粕50g、のし梅4枚

1)酒粕はラップに置いてのし梅と同じくらいの大きさと厚さ(2〜3mm程度)に伸ばして2セット用意します。
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2)1にのし梅をサンドします。
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3)トーチかオーブントースターなどで片面だけ焼き目をつけ、適当な大きさに切ります。
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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 2月の献立より)

2016/02/14

「08 スイーツ男子 芥川龍之介と『しるこ』散歩」

震災以来の東京は梅園や松村以外には
『しるこ』屋らしい『しるこ』屋は跡を絶ってしまった。
その代りにどこもカツフエだらけである。...

芥川龍之介が昭和2(1928)年に、明治製菓のPR誌「スヰーツ」に寄せた短編「しるこ」冒頭の一節である。甘党だった芥川龍之介は、この随筆の中で、ニューヨークやパリの人々や、ムッソリーニまでもが、「しるこ」を啜りながら談笑する様子を想像している。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/24452_11251.html

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その自筆原稿を、鎌倉文学館で見た。*
原稿用紙のマス目の真ん中に、鉛筆でポツリポツリと一文字ずつ丁寧に書かれている。まるっこい小さな字。上から、たくさんの推敲の線が引かれ、さらに小さな文字が加筆されている。「しるこ」という文字も、かわいらしい。

師の夏目漱石に「鼻」を絶賛され、続々と作品集を発表するなど順調な作家人生を歩いていた芥川龍之介。「芋粥」や「蜘蛛の糸」をはじめ、小説の中には、朗らかなユーモアがあちこちに散りばめられていた。でも実際の筆跡は、消え入りそうなほど控えめで、心許なくて、とても繊細。


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鎌倉文学館

この文字を書いた繊細な手が、
「しるこ」のお椀を包むように持ち
ほかほかと温められていた光景を想像してみる。


1892(明治25)年に東京に生まれた芥川龍之介は、鎌倉に二回住んでいる。一回目は大正5(1916)年から約2年由比ガ浜に下宿していた時。二回目は、1919(大正8)年に塚本文と結婚してから、約1年材木座にいた。

それから8年。芥川龍之介が自ら命を絶ったのは、
「しるこ」の随筆を書いてから約2ヶ月半後のこと。

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鎌倉文学館から見る由比ガ浜の春霞の海


もし今の時代に芥川龍之介が生きていたら、
やっぱり不安に押しつぶされていっただろうか。


鎌倉に住んでいたら、小町通り脇の路地にある「納言志しるこ店」に座る姿があったかもしれない。運ばれてくる熱々のお椀のフタを取り、なみなみと盛られた「しるこ」を啜り、小さな店の中で、隣の恋人たちの話し声に耳をすます。

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手元からもノドからも、お腹の中からも温かくなって、満ち足りた気分と、甘さがのどを通り越した後の一抹の淋しさ。そんな感傷は、一歩外を出たら小町通りの喧騒に、あっという間に掻き消されてしまうだろうなあ。


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生きている私たちは、芥川龍之介のいない鎌倉を散歩する。
春の暖かさと名残の寒さが綱引きしているようなこの季節、冬の背中を追いかけるように、温かい「しるこ」をいただく。閉店の時間になっても外はまだ明るい。寒ければ早く暖かくなれと願い、暖かくなれば寒さを惜しむ。今どきのスイーツ男子はといえば、バレンタインのチョコレートに一喜一憂。人はわがままで、移り気で、贅沢だ。

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納言志るこ店
鎌倉市小町1-5-10
phone 0467-22-3105
11:00-17:30(入店は17:15まで)
水曜、第1,3木曜定休 祝日の場合は翌日休

1953年創業
しるこには、つぶと、こしがある。
夏期は氷屋になり、宇治金時が絶品

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*鎌倉文学館 バレンタイン特別展示
http://www.kamakurabungaku.com/event/index.html
(2016年1月30日〜2月14日)


photo&文 中尾京子

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