2015年12月の記事一覧

2015/12/31

「師走の精進料理」

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年の瀬ですね。街を行交う人もみな急ぎ足で、デパートや市場も大賑わい。毎年の風景とはいえ、まさに師も走る月です。師走は「仕果つ」からきた言葉らしいですが、極月、弟月、三冬月と12月は色々な異名がありますね。中でも不思議とほっとするのが「春待月」でしょうか。
鎌倉も御鎮座記念祭や歳の市が終わるといよいよ年神様をお迎えする新年の準備になります。賀状を書いたり、大掃除や御節つくり・・・慌しい中にも、引き締まった気持ちなりますよね。
さて、今月は初めての方でも簡単に作れるそばがきや、お酒をたっぷりと使う"鼈(すっぽん)仕立て"という調理法の汁、御節にも使える旬の百合根を使っての茶巾、朴の葉のよい香りを食材に移して食べる風味豊かな飛騨の郷土料理"朴葉味噌焼"、林檎のフレッシュな香りを楽しんでいただく和え物など致しました。

1.蕎麦がき 2.蒟蒻の鼈汁(すっぽんじる) 3.百合根茶巾 4.冬野菜の朴葉味噌焼 5.林檎の霙酢和

1.蕎麦がき
年越しといえば蕎麦。毎年この時期は蕎麦の料理をなにか1つはたからの庭で皆様と作っていますが、今回はなかでも簡単な蕎麦がきを作ってみました。粉と水の割合はいろいろありますが、粉1:水2がいいようです。熱湯をいきなり入れて作る方法もありますが、やはり少々粉っぽさが残ります。なので、水でよく混ぜ合わせてから火にかけて練っていく方法にしました。そのまま食べてもいいのですが、さらに成形して茹でて茹で汁ごと提供する形にしてみました。冷めるとボソッとしてくるので、ぜひごま油でから揚げにしてください。大変美味しい酒のアテとなります。なお、蕎麦粉は蓼科、浅間の石臼引きを使いました。

材料:新そば粉200g、水400g(蕎麦粉1:水2~2.5)、山葵適宜
本返し:味醂90cc、砂糖45cc、醤油300cc

1)蕎麦粉と水を良く混ぜ合わせます。
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2)1を火にかけ、ひたすらしゃもじで練っていきます。途中火が入ってくると急に重くなりますので、そこまで頑張って練ってください。
3)そのまま熱いうちに本返しや醤油をつけて食べます。今回は練ったものを木の葉に成形してゆでて、そのゆでじるごと出しました。そばがきが粉っぽくて嫌いな方もこうするとしっかり火も入り、また茹で汁ごと出しますと冷めるのも幾分防げますので、よろしいかと思います。
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※本返しは材料を小鍋に入れて火に掛け沸騰したらアクをとり、数分煮詰めたら出来上がり。すぐに使わず数日は寝かせてからのほうが美味しいです。


2.蒟蒻(こんにゃく)の鼈汁(すっぽんじる)
鼈仕立てとは、鼈など癖の強い魚類を調理する場合に、沢山のお酒を用い、生姜やネギなどを薬味もたっぷりと入れる調理方法を言います。蒟蒻をすっぽんに見立てて作りました。生姜で体もポカポカです。

材料:蒟蒻1枚、漬け地:酒・醤油各大1、油適宜
昆布出汁1L,酒1/2c、淡口1/4c、おろし生姜適宜、長ネギ10cm

1)蒟蒻はスプーンなどで1口大にむしり、さっとゆで、湯を捨てた鍋に戻して酒と醤油で下味をつけておきます。
2)1の蒟蒻の水気をふいて、130度程度の低めの温度でちりちりになるまで揚げます。炒めてもけっこうです。
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3)ネギは5cmの短冊に切っておきます。
4)鍋に酒を入れ、煮切ってから昆布出汁を加え、ネギと蒟蒻もいれ、調味し椀にもって、おろし生姜を天盛します。熱いうちにどうぞ。
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3.百合根茶巾
百合根は、ほくっとした独特の食感とともに優しい甘みがあって、冬の贅沢な食材のひとつ。古くから利尿、咳どめ、鎮静効果が知られており、珍重されてきました。本来は裏ごしにかけますが、マッシャーでつぶしただけでも美味しくできますので、ぜひお試しください。傷などを丁寧にとり、真っ白く仕上げてください。

材料:百合根1個、砂糖大1、塩少々、クコの実や松の実など

1)百合根は輪ペンをはずし、洗って傷などを丁寧にとってから、やわらかくなるまで10分程度蒸します。ひたひたの水に酒少々を加えて茹ででも結構です。
2)熱いうちにマッシャーでつぶして砂糖を加えてよく混ぜ合わせます。
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3)ラップでしぼり、天に湯で戻したクコの実やあぶった松の実を乗せます。御節の口とりとしても重宝です。
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4.冬野菜の朴葉味噌焼
朴葉味噌焼きといえば飛騨の郷土料理。風情ある飛騨コンロに乗せて、飛騨味噌と飛騨牛、茸などを乗せて焼きますと味噌の焼けた香ばしい味わいと葉の香りがたまりませんね。飛騨でなくとも初冬には関東でもあちこちで朴葉を見かけます。たからの庭にも沢山落ちていました。飛騨味噌は麴が利いた甘めお味噌ですが、なかなか手に入りにくいかと思います。買い求めやすい信州味噌で代用してください。また包むことで蒸し焼き効果もでて、早く召し上がれるのと、広げる楽しみがありますね。ご家庭で簡単に作れるように、テフロンのフランパンを使用して作りました。どうぞ気軽にチャレンジしてみてください。熱燗のアテにももってこいです。

材料:朴葉各1枚、舞茸1パック、銀杏各2~3個、エノキ1/2パック、粟麩各1cm、牛蒡1本、焼き豆腐
練り味噌:飛騨味噌250g、酒50cc、味醂大2、砂糖60g、長ネギ1/2本、油適宜

1)朴葉は優しく洗い、どろなどをとってから水につけておきます。
2)練り味噌を作ります。鍋に油を敷き、長ネギの微塵切りを炒め、透き通ってきたら一旦火からおろし、味噌、酒、味醂、砂糖を加え、再び火に掛けます。火にかける前に鍋でよく調味料を混ぜておくことを"丘まぜ"といい、どうということもない動作ですが、非常に大事です。火にかけて砂糖が溶けたらおろします。砂糖は冷めると固くなりますので、練りすぎないのがコツです。
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3)銀杏は殻を割り、薄皮をつけたまま、ひたひたの湯のなかで穴あきおたまで転がして火を通し、皮をむいておきます。
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4)茸類は食べやすい大きさに切っておきます。
5)粟麩は1cmに切ってからさっとゆでておきましょう。下茹でしておくと殺菌にもなります。
6)牛蒡は笹がいて、出汁に塩少々(分量外)で煮ておきます。こうして火が通りにくいものは下ごしらえしておくのです。
7)焼き豆腐は水を切って、1cm程度の厚さで食べやすい大きさに切っておきます。
8)水に漬けておいた葉を軽くふいて、具を乗せて、その上から味噌を大1程度乗せて、包みます。
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9)飛騨コンロに網を乗せて焼きます。ご家庭では、テフロン加工のフライパンにおいて蓋をして数分焼いてください。温かいうちにどうぞ。
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5.林檎の霙酢和

林檎で和え物というと、大体刻んで入っている場合が多いかと思いますが、これは和え衣に林檎を使った料理。生ですと酸化で変色してしまうので、一度蒸して火を入れてしまうのです。そうすれば退色が防げます。これもすごい日本料理の知恵です。味はかなり林檎によって違うので、甘酢の量で加減します。なので何ccとは書いておりませんが、概ね1個の林檎に対して大1~2でいいかと思います。箸休めにもとてもさっぱりしてお勧めです。

材料:林檎1個、椎茸各1/2枚、京人参10g程度、水菜1/6把、柚子適宜
甘酢:酢・砂糖1:1、塩少々

1)椎茸は石突を切って、たて塩(水2cに塩大1)に10分程度漬けてから網でやき、荒熱をとってからスライスしておきます。こうして材料に塩味をつけるとき、まんべんなくいきわたるように日本料理では塩を直接振らずに"たて塩"という海水程度の塩水に漬けます。
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2)水菜は塩一つまみの熱湯で数秒さっと茹で、水に取り、巻きすで水気を絞り3cmに切っておきます。巻きすでしぼると指のあとも付かず、きれいに絞れます。これも日本料理の技のひとつです。
3)京人参は7mm幅3cmの長さの極薄に切って、出汁に醤油と味醂少々で煮て下味をつけておきます。
4)林檎は皮をむいて櫛きりし、塩水につけてから蒸し器で7分程度蒸し、裏ごしして甘酢を適宜加えて、好みの味にします。
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5)1~3を和え、あられに切った柚子を天盛します。
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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 12月の献立より)

2015/12/27

「06 綱吉の時代へ、力餅でタイムトリップ 」

店の横手から、もち米の蒸されるふくふくとした香りが、温かい湯気とともに漂ってくる。むむ...うっとりと目を閉じてアゴを突き出し、鼻の穴を静かに膨らませながら、辺り一帯の空気を深く吸い込み、息を止める...

...そのまま5秒。

ゆっくり目を開くと、隣で餅をほおばっている男の顔が見えてきた。無精髭が少しのびて、頭の上にはチョンマゲが乗っている。カツラではない。生で見るリアル・チョンマゲは、毛先がちょっと不揃いである。男の全身は、まさに「水戸黄門」の助さん格さんと同じ旅姿だ。さすが長寿番組は、しっかり時代考証に基づいていたのだと妙なところに感心する。店の前に置かれた木の腰掛けに座って、お茶を飲む者たちもいて、前掛けをつけた娘たちがその間をひらひらと動き回り、注文を聞いている。

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力餅家

白木綿の大暖簾に、威勢よく太筆で書かれた店名は「力餅家」。
一番人気は、店名にもなっている「力餅」だ。なめらかなこし餡が、白い小さな餅の姿が見えなくなるくらいに乗せられた、シンプルな一品。シンプルだからこそ、原料や作り方に少しでも手抜きがあればすぐにバレてしまう。誤摩化しの効かないこういうメニューを看板商品にするところに、店の自負が伺える。

店は角地に立っていて、一方が御霊神社の参道入口に面している。御霊神社は、平安時代に建立されて、地元の祖先五家をお祀りしているのだが、五家の中でも、勇猛果敢だった「鎌倉権五郎さま」が飛び切りの人気者。

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御霊神社

「ゴンゴローさまの力持ちっぷりにあやかりたい」とお餅を供える者がたくさんある。そこから思いついたのが「力餅」というわけだ。

店の南側に面した道は、鎌倉と江ノ島を結ぶ、にぎやかな幹線道路。芭蕉が俳句を詠みながら全国を旅するという企画をはじめてから、すっかり世の中には「旅」ブームが広がって、お腹を空かせた旅人たちがひっきりなしに、この道を歩いていく。一服するのに、まさに「力餅」という名前はピッタリで、開店以来大当たり。

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力持ちの権五郎景正が手玉に取ってみせたという、手玉石 @御霊神社境内

これならこの店も、十年くらい続けられるだろうか...いやもっと長く孫の代まで五十年、百年、ひょっとすると三百年くらい続けられたら...などという展望は、今この時を忙しく送っている店主にはないだろう。

目の前の坂ノ下の海は、ゆたかな漁場として江戸にまで鳴り響いていた。初夏の鎌倉のカツオは、高級カツオの代名詞で、将軍さまへ送られた。芭蕉は、武士のまち鎌倉から、まだ生きている新鮮なカツオが出ていく様子を、「鎌倉を 生きて 出でけむ 初鰹」と詠んでいる。

ところが三百年先の未来では、カツオより、コツコツと作られるこの小さな「力餅」の方が、ずっと立派な名物になる...なんて、一体誰が想像できただろうか。

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力餅


将軍さまといえば、徳川綱吉は、3年前の貞享4年(1687年)に「生類哀れみの令」を発令した。このお触れはもともと、長く続いた戦乱の時代の空気を断ち切るために、殺生を慎むように〜と考案されたものだった。ただ、なかなか効力が表れない...、もっと取り締まりを強化しよう...と改訂を重ねていき、犬への虐待を密告した者に賞金が払われるとか、金魚にまで戸籍を作るとか、どんどんエスカレートしていって、庶民は反発してしまう...

まだ、「人権」などという言葉などなかった時代。あまねく「命」そのものに焦点をあてて、大切にしようというメッセージを法律にするなんて、前代未聞のこと。跡継ぎがいなかったから、捨て子が横行していたからetc.etc.発令の動機や背景には諸説あるけれど、兎にも角にも画期的な出来事だった。

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狛犬の母子 @御霊神社境内

「お犬さま」と揶揄されがちな徳川綱吉公は、まるでバカ殿のモデルのように描かれたりもする。でも、未来の目でもう一度見直してみると、当時の人からは容易に理解されないほど「先見性を持った将軍」だったのかもしれない。事実そのおかげで、日本はその後、大きく舵を切っている。世界でも稀な三百年という戦争のない平和な時代「パクス・トクガワーナ」が生まれ、各地で産業が育ち、ゆたかな江戸文化が花開き、庶民も安心して旅を楽しむことができるようになった。そして旅というものが、ここ鎌倉も元気にしてくれている。

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春季限定の草餅の力餅

餅の香りに誘われて、元禄三年(1690年)の「力餅家」創業当時に、タイムトリップ。しばらくこの時代を堪能して、2016年に戻ったら、将軍さまに御礼を言います。綱吉公ありがとう。

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*御霊神社は、平安時代末期の建立。はじめは地元の有力五家を祀っていたが、やがて人気の突出した鎌倉権五郎景正が一人祭神になった。権五郎は、後三年の役で先陣を切って戦い、目を射られても屈せぬほど強く、矢を抜くために仲間が顔を踏むことを許さないほど誇り高かった(しかもその後、矢は丁寧に抜かれて、目の傷も治ってしまった)という。境内には、その力量を伝える袂石(16貫=約60kg)と手玉石(28貫=約105kg)があり、供えられるのは「力餅家」の「力餅」。

「力餅家」
鎌倉市坂ノ下18-18
am9:00-pm6:00
水曜・第三火曜定休
0467-22-0513

白い餅の「力餅」は通年で作られるが、二月末から五月までは、春季限定「よもぎの力餅」が登場する。日持ちが少し長い、求肥の「力餅」は、やわらかくのびる。
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photo&文 中尾京子

2015/12/27

「覚園寺&明王院 仲田ご住職のお話が聞きたい!④ 『鎌倉と密教...のほんの入口』の巻」

覚園寺と明王院、二つのお寺のご住職である仲田昌弘さんと、ご次男で明王院の副住職をされている仲田晶弘(しょうこう)さんのお話。最終回は、「お寺」と私たちの関係、そして想像もしていなかった結末に?!

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覚園寺さんと明王院さんは、宗派でいうと真言宗、密教のお寺です。せっかくの機会なので、鎌倉の密教についてもお聞きしたい... でも「秘密の仏教」といわれているだけに、難しいでしょうか...

ボンズ・チーム(以下、ボンズ)
少し宗派のこともお聞きしようかと思っていたのですが、たぶん深過ぎてちょっと大変なことになりますよね。大変なことになるかな...

仲田昌弘ご住職(以下、ご住職)
多分みんな密教って何ですかって質問してくるんじゃないですかなって思っていたけれど、密教はそう簡単じゃないよってお話しようかなと(笑)

ボンズ:やっぱりそうですよね、質問するにも大きなテーマなので、徐々に、いろんなお寺を訪ねながら伺っていけたらと。

仲田晶弘(しょうこう)副住職(以下、晶弘さん)
イメージとしては、たぶんね。鎌倉と密教っていうのは離れた感じですけれど、鎌倉幕府が造ったお寺だとか、その当時のオフィシャルなものに関しては密教色の強いものがすごく多いです。八幡宮寺もそうですね。鎌倉時代まで頭をクーッ戻すと、臨済宗や日蓮宗というのは、当時の新興宗教なので、オフィシャルなところが造るものは、その前の時代の平安時代からあるもの(宗派や形式)になった。

ボンズ:たしかに、当時の視点で考えてみるとわかりやすいですね。
晶弘さん:それから鎌倉幕府が造ったものというのは、幕府がなくなった後、どんどんバックアップもなくなってしまうので、そこから禅宗にお宗旨替えしたところも多かったんです。

ご住職:天台もやっぱり密教ですね。

晶弘さん:前の回(第一弾 建長寺高井総長のお話)にも出ていた、栄西禅師さま、も「臨済宗の僧侶です」って言って入ってきたわけじゃないですからね。天台宗のスペシャリストなんです*。で、その中で臨済宗の坐禅もできますよ、というところだったんですけれど、京都ではなかなかそのまま受け入れられなくて、鎌倉で特長を出すことになった。鎌倉に来て臨済宗というのをやりますけれど、でも密教のスペシャリストでもありますから、ご祈祷に関しても、とっても上手になさると。

*鎌倉時代に生まれ育った宗派のほとんどは、密教を含んだ天台宗から来ていて、比叡山で勉強した人が鎌倉仏教を開いたことは、第一回建長寺 高井和尚様のお話にもありましたね。

ボンズ:栄西といえば、お茶の木を中国から持って来た禅宗の僧侶で、臨済宗を開いたとしか習ったことがなかったけれど、なるほど、そういうことなのですね。

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晶弘さん:なんだか今臨済宗の方と僕や密教寺院の方たちが(いろいろな活動を)とても仲良くやっているというのも、もともとそういう繋がりがあるのかなあと思ったりしますね。

ボンズ:きっとご縁ですね。

晶弘さん:例えば日蓮宗はとっても違うアピールの仕方をして出てきましたけれど、もともとは天台でお勉強なさった方ですから、教義の違いではなく、当時のお坊さんは堕落していると批判していくところで認められて、一大勢力になっていった。鎌倉と密教というのは、実はとても繋がりの深いものなんです。当時はね、元寇の時には、元軍退散のご祈祷もしますし、これからこういう戦いに行く、言うことを聞かない人を成敗しに行く、という時も、必ずご祈祷ご祈願するということはやっていましたから、密教寺院が持つ役割はとっても大きかったみたいですね。

ご住職:当時ご祈願する、ということに関しては、極端にいったら、密教の専売特許だった。覚園寺の四宗兼学(お話の第一回を参照)ってあるでしょ、専門道場、勉強する所だったから、そこで教えをいただいたら、天台でも戒(かい)を授けてもらい、禅宗でも戒を授けてもらう、ということになるんですけれど...

ボンズ:あの、「戒を授ける」というのは?

晶弘さん:そこのお弟子さんになること。「戒」を授けられる方は「受戒をする」と言いますね。「戒」というのは、お坊さんが守るべきルールを授けてもらうと言ったらいいですかね、いわゆる出家の時のお作法です。
お葬儀の時に「戒名」ってあるじゃないですか、「戒」を授けてもらうと名前が変わるわけですよ。お葬儀の時のお次第は、僕らの出家のときのお次第と一緒なんです。相手が生きているか死んでいるかの違いだけで。

ボンズ:ああ「戒名」というのは、そういうことなんですね。
つまり、お葬儀の時に戒名を渡されのは、戒を授かったということですよね。

晶弘さん:亡くなってからの旅立ちは、例えば明王院でお葬儀をするとすると、明王院のお弟子さんとして旅だってくださいと、弟子入りをするわけです。

ボンズ:なるほど、だから仏さまになったって言うんですね。

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晶弘さん:そうそう、そこのお寺さんの仏さまのお弟子さんになる。弟子入りするわけです。ですからその導く先生が戒師、導師となります。そういう一連のストーリーがあるんですね。ただお葬儀というとお経を済ませているわけではなくて、真言宗のものに関しては、出家の作法そのまんまですよ。

ボンズ:それは真言宗だけのものですか?

晶弘さん:いやそれぞれ全部あります。戒名をお授けするというところに関しては、(他の宗派の)全部のお次第を見たことはないですけれど、大まかなところは皆一緒だと思います。出家の作法ですよね。

ご住職:仮の世界から仏の世界、生きているうちは仮の世界なんですよ。

晶弘さん:ここでこういうことを守りましょうという戒を授けるわけです。

ご住職:だからキリスト教でもそうでしょ、洗礼受けなかったら信者になれないでしょ。

晶弘さん:あ、似ているかもしれませんね。

ご住職:洗礼を受けていない人は教会の中で葬儀ができないでしょ。キリスト教の洗礼というのは、われわれでいう戒だわね。だから亡くなるちょっと前でいいから、洗礼を受けて、葬儀を教会でという方もある。

晶弘さん:似ていると思います。キリスト教徒として、守ること、詳しくはわからないですけれども、その流れはとても似ていると。
お寺の方では、お寺のお弟子さんとして旅だっていただくために葬儀をする。

ご住職:ただそれが、今段々だんだん崩れてしまっているわけ。

晶弘さん:明王院の場合はお檀家さんがないので、だいたいお葬儀の時は、まずその説明からはじまるわけです。今日戒名をお授けして、これからは仏さまのお弟子さんとして旅だっていただきますから、皆それを応援しましょうと、御供養というのは応援することです、と言わないとわからないから。

ボンズ:わかりやすいです。それ、いつでも言ってほしいですね(笑)明王院さんに限らず。

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晶弘さん:できれば、どなたか亡くなってからお寺へ行って、初めてそういう話を聞いてお葬儀もドキドキしながらやる、というのではなくて、普段からそういうお話を聞いていただけるとうれしいですね。お寺の方でも、そういうことを聞いてください、という雰囲気作りをしなきゃいけないと思います。「戒名」ってお金を払わなきゃもらえないものなんですか?というものじゃなくて。

ご住職:今の一般の人たちは、教会は生きているうちに行くけれど、お寺は死んでから行くものと思っているかもしれない。でも違う、違う。元々お寺は生きているうちに行く所なんですよ。自分のことをよく知っていてもらって、戒を授けてもらう。だから死んでからではなくて、生きているうちに来てくださいと言ってます。導師さまが声掛けても死んでしまっていたら声が返ってこないでしょ、とね。生きているうちに声掛けられる方がうれしい。

晶弘さん:そのぐらいのことは、密教でも秘密でなくて話せますから(笑)それ以上のこと、お作法のこととかになってくると、あんまり言っちゃ行けないといわれることが多いですね。

ボンズ:あ、密教の秘密の入口にちょっとだけ入れました。

晶弘さん:よくうちでは、体操に例えるんですけれど、いきなり宙返りしたらケガしちゃうから、だんだんに練習していくようにちょっとずつやりましょうと。

ご住職:ハサミ入れるのなら、いつでもできるよ。

ボンズ:ハサミですか?

ご住職:ハサミ持ってくれば、すぐにあたま髪の毛切ってもらって(笑)

晶弘さん:そうそう、それ以上聞きたい?それにはご出家していただいて、カミソリもって来られたらすぐ...

ご住職:そうそう、あははは

ボンズ:いえいえ、人生が変わっちゃう!

晶弘さん:取材に行ったら、皆さん尼さんになって帰ってきちゃったなんてことがあったら(笑)

ご住職:いやそういう方が、ボンズくんニュースになるよ(笑)

深いお話だなあと伺っていたら、最後はなんと出家のお話!
貴重なお話の数々を、楽しくわかりやすく伝えてくださったご住職と、晶弘さん、本当にありがとうございました。

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■明王院(飯盛山寛喜寺はんせいざんかんきじ明王院)通称「五大堂」
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真言宗御室(おむろ)派
1235年四代将軍藤原(九条)頼経によって建てられました。
鎌倉幕府の鬼門除けとして祀られた五大明王は、不動を中心に、東に降三世(ごうさんぜ)、西に大威徳(だいいとく)、南に軍荼利(ぐんだり)、北に金剛夜叉(こんごうやしゃ)。護摩法要の時に拝顔できます。

2015/12/27

「2015年 12月・2016年1月 冬本番です 編」

2015/12/13

「浄智寺さんの境内みどころマップ、販売中!」

鎌倉ボンズくんの新プロジェクト、「お寺の境内マップを作っちゃおう!」。
このたび、第一弾《浄智寺》版が完成いたしました!!

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お寺は、祈りの場であり、境内には文化や歴史を伝える「宝物」もたくさん!! はじめて来た方でも、お子さんでも、外国の方でも、「宝物」をちゃんと見つけていただけるように、わかりやすく楽しい境内マップになっています。

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(新進気鋭のイラストレーターKaori Oishiさんとのコラボ作品です!)

北鎌倉 浄智寺さんの拝観受付にて、1部20円で販売をスタートいたしました。ぜひ、お手にとってご覧ください。

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これから、鎌倉市内のお寺さんで続々展開させていただきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします!

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